成効せいこう)” の例文
旧字:成效
彼女はそっと階子段をのぼった。柔婉しなやか体格からだをもった彼女の足音は猫のように静かであった。そうして猫と同じような成効せいこうをもってむくいられた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「独吟」というものの成効せいこうし難いゆえんはこれで理解されるように思う。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
筋の立った報告にまとめる段になると、自分の引き受けた仕事は成効せいこうしているのか失敗しているのかほとんど分らなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女はその或物を拈定ねんていしなければならなかった。しかし彼女の努力は容易に成効せいこうをもって酬いられなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は平生からよくこんな技巧をろうしてその成効せいこうに誇るのがすきであった。自分をわざわざ電話口へ呼び出して、そのうちきっと自分を驚かして見せると断ったのは彼である。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかにして異性を取り扱うべきかの修養を、こうして叔父からばかり学んだ彼女は、どこへ嫁に行っても、それをそのまま夫に応用すれば成効せいこうするに違ないと信じていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
決心はしたようなものの、それでは今立っている所を動かないための横着と同じ事になるので、わざと成効せいこうを度外に置いて仕事にかかった不安を感ぜずにはいられなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
当人の公言するごとくいつわりなき事実ではあるが、いまだに成効せいこう曙光しょこうを拝まないと云って、さも苦しそうな声を出して見せるうちには、少なくとも五割方の懸値かけねこもっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)