戎橋えびすばし)” の例文
戎橋えびすばしの「おぐらや」で売っている山椒昆布と同じ位のうまさになると柳吉は言い、退屈たいくつしのぎに昨日きのうからそれに掛り出していたのだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
道頓堀の夜の灯の街へ吐き出されたとき、美佐子はほっとしたように云って、それには答えず戎橋えびすばしの方へ足を向けかけた夫を呼んだ。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かう言つて辻を西へ曲つて行くお文を、源太郎は追ツかけるやうにして、一所に戎橋えびすばしからクルリと宗右衞門町へ𢌞つた。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
戎橋えびすばしの本当の名は、何というのか? と、人に聞かれたら、一寸、困るだろうと、思う。
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
かう言つて辻を西に曲つて行くお文を、源太郎は追ツかけるやうにして、一所に戎橋えびすばしからクルリと宗右衛門町へ廻つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
太左衛門橋や戎橋えびすばしに近い島の内の最も粋な所にあつて、旅館で待合を兼ねたやうな木屋町式の家であつた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
北の新地で同じ抱主の所で一つ釜の飯を食っていた金八という芸者だった。出世しているらしいことはショール一つにも現われていた。誘われて、戎橋えびすばしの丸万でスキ焼をした。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
戎橋えびすばしの上まで来ると、アオキから尾行して来たテンプラらしい大学生の男が、おい、坊つちやん、一寸来てくれと、法善寺の境内へ連れ込んで、俺の見てゐる前で制服制帽を脱いだり
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
戎橋えびすばしで乗り物を捨ててから再び黙って附いて行くより外はなかったが、夫は電話でくわしく教わったものと見えて、道頓堀のとある芝居茶屋を訪ねて、そこから仲居に送られて行くのである。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うなだれて柳吉は、蝶子の出しゃ張りと肚の中でつぶやいたが、しかし、蝶子の気持は悪くとれなかった。草履は相当無理をしたらしく、戎橋えびすばし天狗てんぐ」の印がはいっており、鼻緒はなおへびの皮であった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そして戎橋えびすばしを越え、橋の南詰を道頓堀へ折れ、浪花座の前を通り、中座の前を過ぎ、角座の横の果物屋の前まで来ると、浜子と違って千日前の方へは折れずに、反対側の太左衛門橋の方へ折れて
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
戎橋えびすばしを一人の汚ない男がせかせかと渡って行った。
四月馬鹿 (新字新仮名) / 織田作之助(著)