おび)” の例文
自分のように、始終結婚というものの不安におびえているよりも、いっそ、そういうことになってしまえば、何もかもはっきりするのではないだろうか。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
女ばかりはおびえがちな寮に、魁偉かいい優婆塞うばそくと美男の浪人が、果し合いの白刃を抜き交わしたので、老女や多くの侍女こしもとは唯あれあれと、一所ひとところに群れ寄って、廊下は時ならぬ花壇かだんとなる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
希望に燃えている、豪壮を愛している、殺伐な裏には優雅にかわいている、血腥ちなまぐさい半面には華麗を慕う。——それは武人自身でなく、むしろ暗鬱あんうつな戦国の下に長くおびえいじけて来た民心にたいして
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)