怕々こわごわ)” の例文
で、母が来いと云うから、あといて怕々こわごわ奥へ行って見ると、父は未だ居る医者と何か話をしていたが、私のかおを見るより、何処へ行って居た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さすが気丈の赤堀先生もぎょっとなりまして怕々こわごわすかして見ましたところ、子按摩はやはりいたので厶りました。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
ゆきちがへに三之助、此処と聞きたる白金台町しろかねだいまち、相違なく尋ねあてて、我が身のみすぼらしきに姉の肩身を思ひやりて、勝手口より怕々こわごわのぞけば、れぞ来しかとかまどの前に泣き伏したるお峯が
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかも金水引に熨斗のしをつけた見事なその菓子折を差出しておくと、奇怪なあの目を空に見開いたまま、ふるえふるえあとずさりして、物をも言わずに怕々こわごわとそのまま消えるように立ち去りました。