御霊屋みたまや)” の例文
御霊屋みたまやのおくを開いて“置文”を取出している母の、ゆるしの合図を、ここに控えて、さっきから、待ちすましている高氏だった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大僧正がお介添えまいらせて、予定のとおり御霊屋みたまやへご参拝が終わると、ご接待というのは塩花お白湯さゆがたった一杯。召し上がるか上がらないかに
「品川にはおよびません。芝御霊屋みたまやの前あたりまで出られたら、よろしかろう。」
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
御霊屋みたまやの美しさや、文武百官の盛んな装おいを見ることが出来ないのです。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いつか、鑁阿寺ばんなじ御霊屋みたまやで、置文を御披見なされた折、兄者人は、その場で、あれを焼きすてておしまいなされた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに祭られてある台徳院殿さまの御霊屋みたまやに、ぺこりとひとつ将軍家がおつむりをお下げになるだけのことですが、下げる頭が少しばかり値段の高い八百万石のおつむりですから
「そちの知るはずはなし、あの折、たれも御霊屋みたまやにいた者はないはずなのに」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わがおやかた多聞兵衛たもんびょうえ殿へは、その忠誠にめでて、内見ないけんをゆるされ、今朝、秋ノ坊の別当とお館とただお二人ぎりで、斎戒沐浴さいかいもくよくのうえ、上宮太子の御霊屋みたまやにて、そっと拝覧を給わったものだ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)