御慶ぎょけい)” の例文
信長がそんな考えにふけっていたとき、うららかな陽ざしを背にして、佐久間信盛のぶもりが、この高閣の一間へ御慶ぎょけいを述べに来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世間並のお世辞上手な利口者なら町内の交際つきあいぐらいは格別つらくも思わないはずだが、毎年の元旦に町名主まちなぬしの玄関で叩頭おじぎをして御慶ぎょけいべるのを何よりも辛がっていた
長松が親の名で来る御慶ぎょけいかな 野坡やば
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「新年の御慶ぎょけい目出度めでたく申納候もうしおさめそろ。……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まず総見寺毘沙門びしゃもんの舞台から見物し、表之門から三之門に入り、御殿主ごてんすから白洲まで来て、ここで、御慶ぎょけいを申しあげる。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本丸の大書院前で、出会いがしら、こう初春らしい声で、御慶ぎょけいべおうている諸侯があった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ松の内なので、御慶ぎょけいの客はちらほら絶えないが、茶わん屋の奥には、妙にしいんと冴えない陰がただよっていて、主人の捨次郎もむっそり顔しているし、いつも陽気な御寮人の姿も見えない。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)