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御供水
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おそなへみづ
流石に巡査の目を
憚つて、日が暮れるのを待つて
御供水を貰ひに来る
嬶共は、
有乎無乎の小袋を
引敝いて葡萄酒を買つて来る様になつた。
又一人、又一人、遂に
忌はしき
疫が全村に蔓延した。恐しい不安は、常でさへ
巫女を信じ狐を信ずる
住民の迷信を
煽り立てた。
御供水は酒屋の酒の様に需要が多くなつた。
時偶近所へ夜話に招ばれる事があれば、役目の
説教もする。それが又、
奈何でも可いと言つた調子だ。或時、
痩馬喰の
嬶が、小供が腹を病んでるからと言つて、
御供水を貰ひに来た。