御丈おんたけ)” の例文
御丈おんたけ三尺というのはない、小さな石仏いしぼとけがすくすく並んで、最も長い年月ねんげつ路傍みちばたへ転げたのも、倒れたのもあったでありましょうが、さすがにまたぐものはないと見えます。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「板橋の東景庵とうけいあんの薬師如来像が盗まれた。これは運慶作の御丈おんたけ四尺五寸という大した仏像だ。厨子ずしは金銀をちりばめ、仏体には、ぎょくがはめ込んである。十一年前の春盗まれて、未だに行方が知れない」
ただ伏拝むと、ななめ差覗さしのぞかせたまうお姿は、御丈おんたけ八寸、雪なす卯の花に袖のひだがなびく。白木一彫ひとほり、群青の御髪みぐしにして、一点の朱の唇、打微笑うちほほえみつつ、爺を、銑吉を、見そなわす。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)