待宵まつよい)” の例文
大宮の庭の名残りの黄菊紫蘭とも見え、月の光に暗い勾欄こうらんの奥からはの袴をした待宵まつよい小侍従こじじゅうが現われ、木連格子きつれごうしの下から、ものかわの蔵人くらんども出て来そうです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その梅次と照吉とは、待宵まつよい後朝きぬぎぬ、とついくるわで唄われた、仲の町の芸者であった。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのめざましい鬱金うこんはあの待宵まつよいの花の色、いつぞや妹と植えたらば夜昼の境にまどろむ黄昏の女神の夢のようにほのぼのと咲いた。この紫は螢草ほたるぐさ、螢が好きな草ゆえに私も好きな草である。
折紙 (新字新仮名) / 中勘助(著)
この席に、大宮に仕えている待宵まつよいの侍従がよばれた。彼女はある時御所で
そのめざましい鬱金うこんはあの待宵まつよいの花の色、いつぞや妹と植えたらば夜昼の境にまどろむ黄昏たそがれの女神の夢のようにほのぼのと咲いた。この紫は蛍草ほたるぐさ、蛍が好きな草ゆえに私も好きな草である。
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)