強直きょうちょく)” の例文
つめの一枚一枚までが肉に吸い寄せられて、毛という毛が強直きょうちょくして逆立さかだつような薄気味わるさが総身そうみに伝わって、思わず声を立てようとしながら、声は出ずに
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
外套の内で、指を曲げたり伸ばしたり強直きょうちょくさせたりしながら足早に歩いた。何処に行くというあてもないのに、さて何処に行こう、と私は立ち止って四辺あたりを見わたした。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
そこで、くちびる両端りょうはしを指でギュッと上に押し上げたまま、二十分程も、じっと辛抱していると、すで強直きょうちょくの起り始めた筋肉は、そのまま形を変えて、如何にも嬉しげな笑いの表情となった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
倉地はそういって海岸線に沿うてむっくりれ上がった砂丘さきゅうのほうに続く砂道をのぼり始めた。葉子は倉地に手を引かれて息気いきをせいせいいわせながら、筋肉が強直きょうちょくするように疲れた足を運んだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)