弦之丞げんのじょう)” の例文
弦之丞げんのじょうの態度が、いよいよすげなく、いよいよ冷静になりゆくほど、銀五郎の語調はまごころをまし、熱そのものとなってくる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禅定寺ぜんじょうじ峠の上から、弦之丞げんのじょうと西東に立ち別れ、一足先に江戸へ入った万吉は、まだ何かの都合で、お千絵ちえ様にも会ってはいないらしかった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうかと思うと、お綱はまた、お伽草子とぎぞうしの拾い読みに、はかない女の恋物語などを見出して、弦之丞げんのじょうのことに思いくらべ、思わず知らず一日を暮らしてしまうこともある。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
炉に対して弦之丞げんのじょうは、ピシリと二、三本の枯れ枝を折り、衰えかけたほたの火へつぎ足している。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弦之丞げんのじょう様は、どこへ行っておしまいなされたのだろう。ちょっと声をかけて行けば、一走り傘を持って行ってあげるのに、町ならいいが山へでも行ったとすると、この雨にズブ濡れだろう。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういえば弦之丞げんのじょう様、どうしたのだろうね」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)