庭面にわもせ)” の例文
翌日あくるひの朝種彦は独り下座敷したざしきなる竹の濡縁ぬれえんに出て顔を洗い食事を済ましたのちさえ何を考えるともなく折々毛抜けぬき頤鬚あごひげを抜きながら、昨夜ゆうべ若い男女の忍びったあたりの庭面にわもせ茫然ぼんやり眼を移していた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)