座附ざつき)” の例文
わたしが帝国劇場の楽屋に出入したのはこの時が始めてである。座附ざつき女優諸嬢の妖艶なる湯上り姿を見るの機を得たのもこの時を以て始めとする。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
やがて座附ざつきの狂言作者の竹柴なにがしが二階から降りて来た。この人は明治の末年に死んだが、楽屋内でも意地の悪いという噂のあることを私たちも薄々知っていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やった伊太利や亜米利加の美人や、外にまだ大勢居る座附ざつきの女が、全部薄い着物を着た半裸体の姿で、数十頭の裸馬と入れ交って、あの楽屋口から練り出して来て、愉快な音楽に合わせながらダンスを
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一方その当時の座附ざつき作者の側をみわたすと、かの黙阿弥もくあみは二十六年一月に世を去って、そのあとをけた三代目河竹新七は市村座の立作者たてさくしゃとして、傍らに歌舞伎座をも兼ねていた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
猿若座の名をもって開場したのである——出勤俳優は団十郎、菊五郎、左団次などの座附ざつき俳優は勿論、それに中村芝翫しかんの親子、助高屋高助、大阪上りの市川右団次、嵐璃寛りかんらも加入して
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)