庇合ひあわ)” の例文
二階の窓から見おろす位置にある、ケチンの庇合ひあわいから猛烈な煙が吹きだし、合掌になった軒下を、炎がチラチラ走っている。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
家々の庇合ひあわいにはあらゆる種類の洗濯ものと内地人や半島人のかみさんたちと子供たちと病人とが動いているのであった。
朝の風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
殺して、土蔵の庇合ひあわいとか、井戸の後ろとか、戸袋の蔭とかに隠れて、大勢人が出たところへ、そっとまぎれ込む手はあるぜ
二尺ほどの狭い庇合ひあわいを、身体を横にして擦りぬけたりするような芸当を、ものの十五分もやらなくてはならない。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
けれども、四方の壁が柱と同じようにやっぱり真黒い塗料でぬりこめられているから、その明るさなどは吸収されて、机のところに、単調で鈍い庇合ひあわいの明るみが落ちているばかりであった。
二つの庭 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)