幽欝ゆううつ)” の例文
私は不平と幽欝ゆううつと孤独のさびしさとを一つ胸にいだいて、九月にってまたKにいました。すると彼の運命もまた私と同様に変調を示していました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花柳病と併せてそれらのものが駆逐されるのでなければ、人類の幸福は常に幽欝ゆううつな陰影を伴うことを免れません。
新婦人協会の請願運動 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
彼がテーブル掛けにうつ向いた時彼の長い幽欝ゆううつな顔はいよいよ長くより幽欝になった様に思われた。彼の長い指は死の都そして彼等の寺院や塋穴の国の様にそれの上に模様をつけてるように見えた。
実にかのウェストミンスターの幽欝ゆううつなる積土の中に沈黙したる一個の死人はかえって議院壁内に起ちて扼腕やくわん撃節多々ますます弁ずるの衆多の生人よりも氏が進路を防障するものといわざるべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)