差出さしい)” の例文
再びせきとしたれば、ソと身うごきして、足をのべ、板めに手をかけて眼ばかりと思ふ顔少し差出さしいだして、かたをうかがふに、何ごともあらざりければ、やや落着おちつきたり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と云いながら蕎麦饅頭時雨饅頭なんぞを紙の上に山盛に致し、久八の前に差出さしいだす。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「人に斬られる島田でない、ここにて見物せられい、差出さしいでては邪魔になる」
「御注意難有ありがとう存じます。」と伯爵夫人が御会釈あり。取出とりいだすは折目無き五円紙幣さつ。「これで。」と差出さしいだせば、「はいはい。」と取ってすましたもの、剰銭つりださん気色も無し。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)