岩殿いわどの)” の例文
武州ぶしゅう比企郡高坂村大字岩殿いわどのの岩殿観音の寺伝に曰く、坂上将軍東征の時、この御堂おどうの前に通夜し悪龍を射斃いたおしたことがある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「おお、雲は切れめなくいちめんになってきた。咲耶どの、もうこまをはやめてはあぶない、わしはここでおりますから、あなたは岩殿いわどのへお帰りなさい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この島の火山には鎮護ちんごのためか、岩殿いわどのと云うほこらがある。その岩殿へ詣でるのじゃ。——火山と云えば思い出したが、お前はまだ火山を見た事はあるまい?
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ところが、笹子ささご、初狩、岩殿いわどのあたりの草深いそんな旅籠屋はたごやでも、この頃の客の混みあう様は、凡事ただごととも思えない。そしてその多くが上りよりも、下りの客だった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)