岑閑しんかん)” の例文
間遠まどおに立っている七、八軒の家の前を過ぎた。どの家も人がいないように岑閑しんかんとしていた。そこを出抜けるとなるほど寺の門が見えた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
の家も人が居ないやうに岑閑しんかんとしてゐた。そこを出抜けると成程寺の門が見えた。瓦に草が生えて居る。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
奥の方に入られて仕舞ふて茫然ぼんやりと土間に突立つたまゝうちの螢に脱去ぬけられし如き思ひをなしけるが、是非なく声をあげて復案内を乞ふに、口ある人の有りや無しや薄寒き大寺の岑閑しんかん
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
岑閑しんかんとせし広座敷に何をか語る呼吸の響きかすかにしてまた人の耳に徹しぬ。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
奥の方に入られてしもうて茫然ぼんやりと土間に突っ立ったままうちほたる脱去ぬけられしごとき思いをなしけるが、是非なく声をあげてまた案内を乞うに、口ある人のありやなしや薄寒き大寺の岑閑しんかん
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
岑閑しんかんとせし広座敷に何をか語る呼吸の響きかすかにしてまた人の耳に徹しぬ。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
岑閑しんかんとした霧の暮に、あらい金網を張つてゐる危ふげな突端にいたると、一谷呀然がぜんとして開けて、たゞ白煙蒼霧の埋めてゐるかなたに、恐ろしい瀧の音が不斷の響きを立てゝゐるばかりであつた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)