屈請くっしょう)” の例文
さて、おのおの、今日は御老女の思召おぼしめしと、我々の希望とにより、慢心和尚を屈請くっしょうして、一席の説教を聴聞致す次第でござるが、和尚は、今日、甲州の恵林寺から下山致された。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
国太郎が、この僧を自宅に屈請くっしょうして教えを乞うたのは勿論である。
とと屋禅譚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこで大原の立禅寺りゅうぜんじに法然上人を屈請くっしょうした。元の天台の座主顕真僧正は、この法門はわれ一人のみ聴聞すべきにあらずと云うて、諸方に触れをして南都北嶺の高僧達を招き集めることにした。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの災難の後、父がわざわざあの坊主を屈請くっしょうして、施行と供養を催して、自他の良心を欺かんとしたあの唾棄すべき喜劇。滑稽とも、悲惨とも言い様のないほどに、厭悪えんおを感じているのは事実です。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)