居耐いたたま)” の例文
お俊はそのうしろ姿を見ながら呟やいて、己れも亡くした子供のことでどうかすると居耐いたたまらない気もちを刺戟されながら、ぼんやり玄関へ出た。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その声が、おそらく大きく聞こえたので、杉戸の外にかがんでいた当の金吾は、思わず居耐いたたまらない気もちに駆られて、無意識にそこに立ち上がったのでした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むずと胸倉むなぐらを取られると、目の玉が出そうな豪傑のかしら対手あいてには文句も言われず、居耐いたたまらなくなった処を、けぶりいぶされて泥に酔ったように駈出かけだして来たのである、が
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
埋葬につらなった人々は、それから兄の家に引かえして座敷に集った。「波状攻撃……」と誰かが沖繩の空襲のことを話していた。その酒席に暫く坐っているうちに、彼はふと居耐いたたまらなくなった。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)