尾久おく)” の例文
それは尾久おくわたしあたりでもあったろうか、のんどりした暗碧あんぺきなその水のおもにはまだ真珠色の空の光がほのかに差していて、静かにいでゆくさびしい舟の影が一つ二つみえた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
光映は明治元年五月十五日上野戦争の際輪王寺りんのうじの宮に供奉ぐぶして上野をのが三河島みかわしま尾久おく村に潜み、十七日市ヶ谷富久町いちがやとみひさちょうの自証院にいたっていとまを賜った。以上は森鴎外もりおうがい先生の「能久親王よしひさしんのう事蹟」に見えている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)