小遣帳こづかいちょう)” の例文
相変らずの棒書きで、小遣帳こづかいちょうに毛の生えたようなもので、自然と風景の批評もなければ、人情と土地柄の研究もありはしない。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夫人は、居間で、小遣帳こづかいちょうらしいものを出して調べていた。五十に近い小柄な細面の顔は年よりもけて見えた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
権之助はもう忘れて、草の上に坐りこみ、矢立を出して、昼前の旅の小遣帳こづかいちょうをつけていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病気になった最初はじめっから、なぜですか、もうちゃんと覚悟をして、清川を出て寮へ引移るのにも、手廻りのものを、きちんと片附けて、この春からけるようにしたっちゃ、威張っていた、小遣帳こづかいちょう
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、与八が若干の文字、曲りなりに手紙の文書を書いたり、小遣帳こづかいちょうをつけられる程度の素養が出来上ったと認められたのですが、これはかつて表面に現わしたことはない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いわば小遣帳こづかいちょうの出来のいいような、徹底的に実用向きの書き方だから失望しました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)