尋常ひととおり)” の例文
ところで大津法学士は何でも至急に結婚して帰京の途中を新婚旅行ということにしたいと申出たので大津家は無論黒田家の騒動さわぎ尋常ひととおりでない。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
が、それ以後しばしば往来して文学上の思想を交換すると共に文壇の野心を鼓吹インスパヤされた事は決して尋常ひととおりでなかった。矢崎鎮四郎やざきしんしろうを春廼舎に紹介したのもやはり二葉亭であった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
……とまれ武田家で高坂と云えば、尋常ひととおりならぬ家柄だ。そうして俺には由縁ゆかりのある名だ。……武田の家臣、高坂甚太郎。……武田……高坂……由縁のある名だ。……昔のことを思い出す。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
四十年前俳優がマダ小屋者こやものと称されて乞食非人と同列に賤民視された頃に渠らの技芸を陛下の御眼に触れるというは重大事件で、宮内省その他の反対が尋常ひととおりでなかったのは想像するに余りがある。
ではこの独楽には尋常ひととおりならない、価値と秘密があるのだろう。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)