富嶽ふがく)” の例文
新字:富岳
まだ臨済寺の菊は晩節のにおい高く咲いていたが、府中の城下から仰ぐと、眉に迫るほど間近な富嶽ふがくは、真っ白な雪になっていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白雲、黒雲、積雪、潰雪くわいせつ閃電せんでん、猛雷、是等のものを用役し、是等のものを使僕し、是等のものを制御して而して恒久不変に威霊を保つもの、富嶽ふがくよ、夫れ汝か。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
星は光をうしないて夜暗く、鶯は哀歌を弾じて心をいたましむ、富嶽ふがくも今は余のものならで、かつて異郷に在りし時、モナドナックの倒扇形とうせんけいを見、コトパキシの高きを望みし時
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
神田お茶の水の昌平坂しょうへいざか駿河台するがだい岩崎邸門前いわさきていもんぜんの坂と同じく万世橋まんせいばしを眼の下に神田川かんだがわを眺むるによろしく、皀角坂さいかちざか(水道橋内駿河台西方)は牛込麹町の高台並びに富嶽ふがくを望ましめ
長篠ながしのまでは出馬したが、富士の神容しんようには接していなかったし、参州吉良さんしゅうきらまで鷹狩たかがりに出向いたこともあるが、ついぞ富嶽ふがく秀麗しゅうれいは仰いでいない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)