寂々せきせき)” の例文
第二に、寂々せきせき寥々りょうりょうたる場所に多き事情あり。第三に、死人ありたる家、久しく人の住まざりし家、神社仏閣、墓畔ぼはん柳陰りゅういんのごとき場所に多き事情あり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
春の色香いろかでたるはあはれむべく、打霞うちかすめる空に来馴きなるるひよのいとどしく鳴頻なきしきりて、午後二時を過ぎぬる院内の寂々せきせきたるに、たまたま響くは患者の廊下をゆるう行くなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
落葉らくようを踏んで頂に達し、例の天主台の下までゆくと、寂々せきせきとして満山声なきうちに、何者か優しい声で歌うのが聞こえます、見ると天主台の石垣いしがきかどに、六蔵が馬乗りにまたがって
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)