七月十二日の夜から十三日の暁へかけて摂社みやのめ神社——祭神天鈿女命あめのうずめのみことほか二柱——の祭があり、舞人が青摺あをずりの舞衣をきて舞ふ。
府中のけやき (新字旧仮名) / 中勘助(著)
天鈿女命あめのうずめのみことが、岩戸の前で、踊っている。鶏が大きく口をひらいて、鳴いている。手力男命たぢからおのみことが、岩に手をかけて開いたところに、天照大神あまてらすおおみかみの美しい顔が見える。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
『古語拾遺』に天鈿女命あめのうずめのみことは〈猿女君の遠祖なり云々、今かの男女皆号して猿女君とす〉とある通り、その子孫代々男女とも父の氏を称せず母の氏で押し通したんだ。
祭神は一宮記に、天思兼命あめのおもいかねのみことの一男とあるが、もとより拠るところを知らぬ。太宰管内志には文化十年の壱岐島式社考を引いて、祭神天忍穂耳尊・手力雄命たちからおのみこと天鈿女命あめのうずめのみこととある。
手長と足長:土蜘蛛研究 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
一体古代の笑いは敵魔懾伏しょうふくの魔法であったことが民俗学の方から次第に明らかにされて来ているが、そこまでは溯らなくても、奈良・平安時代の御神楽おかぐらには、天鈿女命あめのうずめのみことが岩戸の前で踊ったように
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)