大須おおす)” の例文
「あんた、大須おおすの観音さんは賑かでなも。東京なら浅草のようだも。活動写真が仰山ぎょうさんあって、店の小僧が毎晩行って困るわえも」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
名古屋の大須おおすの観音様で拾ってきた雌の雑種で、汽車・電車の乗り物もバスケットのなかにおとなしくしているので持ち歩きも便利であった。
(新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
大須おおす玄琢は学才があるのに、父兄はこれに助力せぬので、貞固は書籍を買って与えた。中には八尾板やおばんの『史記』などのような大部のものがあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
老人もずっと以前にためしたことがある、大須おおす才之助という番頭のときで、琴と一節切ひとよぎりを使った。一節切は老人がやり、琴は番頭が城下から盲芸人を呼んでくれた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
東京の浅草、大阪の千日前、京都の新京極、それに匹敵するのが名古屋の大須おおすである。そこには金竜山浅草寺ならぬ北野山真福寺があつて、俗にこれを梅ぼしの観音といふ。
名古屋スケッチ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
この年の頃になって、媒人なこうど表坊主おもてぼうず大須おおすというもののむすめてるめとれと勧めた。「武鑑」を検するに、慶応二年に勤めていたこの氏の表坊主父子がある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)