壁一重かべひとえ)” の例文
その頃北川氏は二軒建ちの一寸ちょっとした借家に住んでいたのだが、ある日、真夜中に棟を同じゅうしている、壁一重かべひとえ隣りから失火して、彼の家も丸焼けになって了った。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だから長屋と長屋とは壁一重かべひとえで仕切られながら、約一丁も並んでいるばかりか、三尺の往来を越すとすぐ向うのうちになる。上り口を枕にして寝れば、吸付莨すいつけたばこのやり取りぐらいはできるほど近い。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
隣とは壁一重かべひとえである。柳斎は、声をひくめて。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)