墨痕すみあと)” の例文
有名な曹植そうしょくの「七歩詩」である。山僧のわざでもあろうか、書体にも写経風があった。が、壁の墨痕すみあともいつか春秋の雨や風にうすれてゆく。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれも三尺に満たぬ木標もくひょうが建られていた。古いのは腐ってしまい、二三年前のものは、墨痕すみあとが雨風に消えて、根元が腐りかけてかしがっている。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらは青々と澄みわたりて、地には菊花の芳香あり、此処都会の紅塵こうぢんを逃れたる角筈村つのはずむらの、山木剛造の別荘の門には国旗翩飜へんぽんたるもとに「永阪教会廿五年紀念園遊会」と、墨痕すみあと鮮かに大書せられぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
墨痕すみあとのにじんだ紙切れが、ゆわいつけてある。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)