執達吏しったつり)” の例文
これは執達吏しったつりであった。かれはたびたび来た。あまりたびたび来たので、しまいにはわたしたちの名前を覚えるほどになった。
基康 わしはこの命令の執達吏しったつりにすぎないのだ。わしは清盛殿の意志をあなたがたにお伝えすればそれでいいのだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
自分の夫たるべき男をひとられて、加之おまけに自分がんなひどい目に逢うとは、債権者が債務者から執達吏しったつり差向さしむけられたようなもので、余りに馬鹿馬鹿しい理屈である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
亡夫の遺産は年端としはもゆかぬ庄吉がみるみる使い果し家屋敷は借金のカタにとりたてられ、執達吏しったつりはくる、御当人は逃げだして文学少女とママゴトみたいな生活して、原稿は売れず
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あたかも道楽息子に実印を渡した様なもので、借用証文にベタベタ判をしてしまったのにも気付かず、執達吏しったつりが押し懸けて来て愈々いよいよ強制執行をされる段になって、初めて大騒ぎをすると同然である。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)