らつ)” の例文
勝手に書いたとは何を申すぞ、この一らつ、表立って江戸大公儀に聞えなば、家名断絶、秩禄没収ちつろくぼっしゅうは火をるより明らかじゃ。
これより伴藏は志丈と二人連れ立って江戸へ参り、根津の清水の花壇より海音如来の像を掘出す処から、悪事露顕の一らつはこの次までお預りに致しましょう。
全体此の場の一らつは何の様に終わるだろう、余は息を殺して居ながらも全身の筋肉が躍る様な想いである。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
今夜の一らつ、天草殿へ、至急お知らせしなければならない。死骸かそれとも負傷したのか、とまれ犠牲者に相違あるまい。そいつを抱えてウロウロと、あんなところを歩いていた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わけもなく看破されてしまった一らつは、さきにしるしたとおりである。
ひどい煙 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)