土竈へつゝひ)” の例文
貧乏人へのほどこしにする約束で掘ると、土竈へつゝひの下、床板を剥いで、一尺五寸ほどの深さの地中から、古い小さい梅干瓶うめぼしがめが一つ出ましたよ。
「良いものが見付かつたよ、その切つた先の方、二三尺の麻繩を搜してくれ、多分、土竈へつゝひか風呂場の焚き口か、縁の下だらうと思ふが」
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それは同じ土竈へつゝひの土の割れ目に、奧深く押し込んであつたのを、平次は少しばかりの土のこぼれてゐるのからたぐり出したのです。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
平次は土間に降りると、門口に立てかけてあつた、古材木を一本持つて來て、土間の隅に築いた、頑丈な土竈へつゝひを力任せに突いたのです。
土竈へつゝひの中も、羽目板の後も、絶對に見落さない筈ですが、夜中までかゝつて、小刀一梃、いや、針一本見付からなかつたのです。
「お寺の格天井の檜板だと言つて居ましたが、そのうちの二三枚を、細かく割つて土竈へつゝひの下で燒いてしまひました」
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
三千兩の小判が、檜木官之助の家と、屑屋の久吉と、伊八の家と、三軒の土竈へつゝひから、ゾロゾロと飛出し、かぞへて見ると、三千兩より少し多いくらゐです。
ところがヅブの素人で、獨り者と來て居るでせう。住んで居るのは、少し猫又見たいになつた、叔母さんといふ年寄りが一人だけ。こいつは土竈へつゝひの中に首を
殺されたお皆は、店先から取おろして、磨き拔いた釜の前——土竈へつゝひの側に寢かされたまゝにしてありました。
「曲者はそんななまやさしい人間ぢやない。土竈へつゝひか風呂のき口でなきや——兎も角、與吉にさう言つて、鼻の良い犬を搜し出し、ちよいと借りて來てくれ」
などと笑つて居たが、さう言ふお前の家の土竈へつゝひの下には、十五枚の小判が埋まつて居ると言はれ、大膳坊立ち會ひの上で掘つたのは、麹町六丁目の洒屋久兵衞だ
土竈へつゝひにもたれるやうに、下女のお市は變な恰好をして崩折れて居ります。それは決して唯の居眠りではなく、何となく不自然で無氣味な姿態になつて居るのです。
「伊八の娘の信乃しのはこれを三枚持つて居りました。御勝手の土竈へつゝひの上の、荒神樣のところに貼つてあつたのをはがしたものです。すゝけたり、破けたりして居りますが」
「それから、臺町の由松親分は、裏の小林樣の浪宅を見張つてゐるから、お前も手傳つて、この匕首の鞘を搜してくれ、打ち割つて土竈へつゝひの中に押し込んであるのかも知れない」
「お前に覺えがないのに、若い女が夜中ノコノコやつて來るものか。下でうんと土竈へつゝひいぶしてやるから、まゆつばでもつけて應對しろ。お前は人間が甘いから、少しも氣が許せないよ」
土竈へつゝひほこりを冠つた、赤つ毛の背の高い娘、着物も洗ひざらしの木綿物ですが、この見るかげも無い下女が、三尺のところへ來て、恐る/\顏を擧げたのを見て、平次も思はず太息といきをつきました。
やがて其の隙間からスルスルと伸びて來た鳶口とびぐちが一梃、ガラツ八が念入りに縛つた引窓の綱の——土竈へつゝひの上の折釘のところの——結び目に引つ掛かると、なんの苦もなく解いてしまつたのです。
「待つて下さい。幸ひ土竈へつゝひが見えるやうだ、火打箱か燭臺しよくだいがあるでせう」
四谷のお常客とくい樣から、冬支度の仕立物を頼まれて、泊りがけで縫つて居るうち、現に目の前で、大膳坊が土竈へつゝひの下から、小粒と小判交ぜて二兩三分と掘り出したのを見て來て、私の家の土竈の下にも
それに匕首の鞘をお勝手の土竈へつゝひで燒かうとしたのもをかしい
恐らく土竈へつゝひの蔭で、居眠りでもして居たことでせう。
土竈へつゝひの中を覗くとこれがありましたよ」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)