囲繞ゐねう)” の例文
旧字:圍繞
早大附近の有ゆる道路は小刻みに走る観衆織るが如く、定刻にさきだつ一時間、既に早くグラウンドの周囲は逆捲く人浪を以て囲繞ゐねうせられて了つた。
北はナザレ一帯かみガリラヤの連山、南はサマリヤの連山、東はキルボア山、小ヘルモン山、西はカルメル山脈に囲繞ゐねうされたるほゞ三角形の盆地にて、南北の最長約七里
ペエテルブルクに在りし間に余を囲繞ゐねうせしは、巴里絶頂の驕奢けうしやを、氷雪のうちに移したる王城の粧飾さうしよくことさらに黄蝋わうらふしよくを幾つ共なくともしたるに、幾星の勲章、幾枝の「エポレツト」が映射する光
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
渠は斯の如く人間の最上府を囲繞ゐねうして、而して人間の結托せる社会を鎮護せり。社会と名づけ、国家と呼ぶも、要するに個々人間の最上府が、自由の意志を以て相結托せる衆合躰に過ぎざるなり。
思想の聖殿 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)