そそのか)” の例文
芝居気たっぷりの片手斬りに大向うをうならせようという見得みえから出たのでもなく、はしなくそそのかし得たり少年の狂——と春濤がうたった通りの
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「勘違いなんかするものですか。お妻が下手人でなきゃア、お妻に変な素振りをする釜吉とかいう下男をそそのかして、憎い和助さんを殺させたに違いありません」
白の頭上には何時となく呪咀のろいの雲がかゝった。黒が死んで、意志の弱い白はまた例の性悪しょうわるの天狗犬と交る様になった。天狗犬にそそのかされて、色々の悪戯も覚えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
裏ではこれだけの陰険な悪事をたくらんで伯爵をそそのかしている殿下の方こそ、伯爵に十層倍し、二十層倍し、百層倍増した悪漢中の大悪漢であると、嬢は頬に血を上らせた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
或いは兵馬さんをダシに使ってそそのかしておられるのか、もう少し手強てごわい意見をして下されたら……お松はあまりの残念さに、つい人を怨んでみる気にもなりましたが
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
転宿てんしゅく直差じきさし(札差いじめに、旗本や御家人の人の悪いのが用いた手段)を父上が旗本仲間にそそのかしたと思い込んで、少しばかりの落度を、支配の若年寄まで申出でたためで
なかにはお君がお銀様をそそのかして、一緒に駈落かけおちをしたのではないかと言っているものもありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつぞや拙者の宅で様物ためしもののあった時、集まる者にこの刀を見せてやりたいから、それで幸内をそそのかして、ひそかにそれを持ち出させた、それはお銀どの、そなたもよく御存じのはず……いや
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
第六天の神主の鏑木甲斐かぶらぎかいという人が、かなりける方で、道庵とも話が合うのだから、これから興に乗じて、その人をそそのかそうという企らみのように解釈するのも、余りに穿うがち過ぎているようです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はしなくそそのかし得たり少年の狂
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)