たかし)” の例文
たかしは彼の部屋の窓から寝静まった通りに凝視みいっていた。起きている窓はなく、深夜の静けさはかさとなって街燈のぐるりに集まっていた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
或時、委員の一人にて、これも鋭利なる論弁家であった東京控訴院長長谷川たかし君が、総会の席上で原案の理由なきことを滔々とうとうと論じていると、梅君はその席から「大いに理由がある」と叫んだ。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
主任の粕谷が村の青年小峯たかしと話をしてゐる。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そしてその児が意地の悪いことをしたりする。そんなときふと邪慳じゃけんな娼婦は心に浮かび、たかしたまらない自己嫌厭けんおちるのだった。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「この空気!」とたかしは思い、耳をそばだてるのであった。ゾロゾロと履物はきものの音。間を縫って利休が鳴っている。——物音はみな、あるもののために鳴っているように思えた。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)