喞筒ぽんぷ)” の例文
牛乳は一旦煮沸したる者を喞筒ぽんぷにて三階に送り、其処にて氷を盛りたる鉄の曲管間を潜らせ、その状あたかも滝の如く、潺々せんせん混々、白糸を撒くが如し。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
田舎から喞筒ぽんぷを曳いてくる鈴の音と、遠近をちこちに鳴り響く半鐘とが入り乱れて、誰の心にも、悲愴な感じをみなぎらした。併し各人は其音を聞いたとは思はなかつた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
ハットン市に在るだけの蒸気喞筒ぽんぷは悉く引き出されて、同市中に配布された。これならば全市が一時に火事となるともただちに鎮滅する事が出来ようと思われた。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
鍔無柄巻の小刀一本(一尺足らずのものである。)金属製の小喞筒ぽんぷ(これで硫酸や硝酸を、敵の面部へ注ぎかけた。)精巧無比の発火用具(燧石の類である。)折畳式の鉄梯子、捕繩、龕燈
五右衛門と新左 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
市民は一切いっさいの燃ゆべき物品をことごとく日光の射さぬ所へ隠しつつある。市中の喞筒ぽんぷは総出となりて屋根に水を注いでいる。午前十一時、かかる注意にもかかわらずチープサイドのある屋根が火を発した。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)