啓坊けいぼん)” の例文
もう奥畑の啓坊けいぼんは昔のような純真な青年ではなくなっているらしいと云うことを、近頃しばしば夫から聞かされるからなのであるが
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あなた方は一遍ゆっくりお休みなさいと啓坊けいぼんが云うのに任せて、二人は隣室に寝、病室には啓坊が、病人の枕元まくらもとでごろ寝していたらしかった
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
啓坊けいぼんのお母さん、死にやはったわなあ、と云って、そっと妙子の顔色を窺うと、妙子が、ふん、と、ひどく興味のない返辞をしたことがあった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
………誰にも身贔屓みびいきと云うものはあるから、ばあやの眼には啓坊けいぼんと云うものが純真の青年のように映るのであろうけれども
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
啓坊けいぼんの兄が多少の資金を出してやったり、得意先を世話してやったり、いろいろ庇護ひごを加えてやった縁故があるので、啓坊も贔屓ひいきにしていたところ
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そしたら、啓坊けいぼんのことから聞くけど、こいさん今でも、ほんとうに啓坊と結婚する気イやのん?」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、或る時幸子は、「お宅のこいさんが奥畑の啓坊けいぼんと夙川の土手を歩いてはったのを見た」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)