唐国からくに)” の例文
魔よけのつるぎをふるっている鍾馗しょうきまでが、どうも山の人ではなくて、唐国からくにあたりから船で海を渡ってきた目の大きな人のように見えます。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……まるで、もうここはあの国の幽邃境ゆうすいきょうだ。……深遠な唐国からくにの空気がそのままに漂っているではないか。……何と云う神秘な静寂だろう。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
ひぐまにあらず、この国ではめったに見ることができない、というよりも、太古以来絶えて存在を許されていない種類の動物、唐国からくにの虎という獣に似たやつが一頭
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
過てるを知ってはばか事勿ことなかれとは、唐国からくにの聖人も申された。一旦、仏菩薩の妖魔たる事を知られたら、匇々そうそう摩利の教に帰依あって、天上皇帝の御威徳をたたえ奉るにくはない。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
唐国からくにに名を残しける人よりもゆくへ知られぬ家居いへゐをやせん
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)