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咄嗟
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あなや
唯見る間に
出行く貫一、
咄嗟、
紙門は鉄壁よりも堅く
閉てられたり。宮はその心に
張充めし望を失ひてはたと
領伏しぬ。
遽に千葉に行く事有りて、貫一は午後五時の
本所発を期して車を飛せしに、
咄嗟、一歩の時を遅れて、二時間
後の次回を待つべき
倒懸の難に
遭へるなり。
氷の如く
冷徹りたる手をわりなく
懐に差入れらるるに驚き、
咄嗟と見向かんとすれば、後より
緊と
抱へられたれど、夫の常に
飭める香水の
薫は隠るべくもあらず。