右見左見とみこうみ)” の例文
震える手であかるい処へ持出して、顔を見られまいと、傍目わきめらず、血の上った耳朶みみたぶあこうして、可愛らしくかしこまって、右見左見とみこうみ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其儘そのまゝ持行きて目科に示すに彼れ右見左見とみこうみ打眺うちながめたるすえ「コレハ大変な手掛だ」と云い嚊煙草の空箱を取出す間も無く喜びの色を浮べたれば
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そこで一同は、この異様なグロテスクを怪訝けげんかおをして右見左見とみこうみしていたが、本来の目的はこのグロテスクを眺むることではなく、単純に雨滴石あまだれいしを求めんがためでありました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
書いてしまった七文字を神尾は、また右見左見とみこうみしてながめています。文字は決して悪い出来ではありません。文字の示す通り、女軽業の看板としては勿体もったいない書風であります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)