可懼おそろ)” の例文
お繁の亡くなった頃は、私もよく行き行きして、墓畔ぼはんの詩趣をさえ見つけたものだが、一人死に、二人死にするうちに、妙に私は墓参りが苦しく可懼おそろしく成って来た。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お房も一緒に笑ううちに、逆上のぼせて来たと見えて、母親の鼻といわず、口といわず、目といわず、指を突込もうとした。枕も掻※かきむしった。人々は皆な可懼おそろしく思った。しまいには、お房は大声に泣出した。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)