可傷いたいた)” の例文
それまで彼女は激しい季候を防ぐものもなしに、よく途中から寒い雨にれて来て、その可傷いたいたしさが岸本には見ていられなかったからで。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その心を思うと、実に可傷いたいたしかった。死の中から持来す回生の力——それは彼の周囲にある人達の願いであるばかりでなく、また彼自身の熱い望みであった。春が待たれた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
最早一頃ひところのように恐ろしく神経のとがった、可傷いたいたしい調子は彼女の手紙の中に無かった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)