口腔こうくう)” の例文
その唇へ、一人の男が棒をさしこんであけてみたところ、たしかに中には口腔こうくうがあったが、ふしぎなことに歯が一本もなかった。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は四郎の屍体の口腔こうくうを開かせ、その中に手をグッとさし入れると咽喉の方までぐってみたのが、果然かぜん手懸てがかりがあって、耳飾の宝石が出てきた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ごらんにならなかったでしょうか、あの婦人の口腔こうくうの中の変色した舌や粘膜ねんまくを。それから変な臭いのすることを。——あれだけのことがあれば、頓死とはいえませんよ」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
顔面はドス黒く紫色にれあがり、両眼はけわしくクワッと見開いてあたわざる距離を見つめていた。あえぎ終った位置に明け拡げられた大きな口腔こうくうのうちには、弾力をうしなった舌がダラリと伸びていた。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)