口下手くちべた)” の例文
そうして信州のひとも、伊豆のひとも、つつましく気がきいて、口下手くちべたの笠井さんには、何かと有難いことが多かった。湯河原には、もう三年も行かない。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「親分さん。手前はとかく口下手くちべたで困りますので……。まあ、お聴きください。手前自身のことではございませんので、実は主人の店に少々面倒なことが起りまして……」
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしそれをそうとっつけに母にも言えないから、母に問い詰められてうまく返答ができない。口下手くちべたな省作にはもちろん間に合わせことばは出ないから、黙ってしまった。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「実に困ってしまう。おれは皆も知っている通り口下手くちべただからなあ」といいます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)