厭離おんり)” の例文
高野の山へ集って来たからにはどうせ世を厭う人々ではありながら、同じ厭離おんりの願いを遂げるにも座禅入定にゅうじょうの法もあれば念佛三昧の道もある。
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今月になつてからは、正宗君の『毒婦のやうに』と秋声君の『厭離おんり』とを読んで見た。
小説への二つの道 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
フランクの音楽は、いかにその外見は壮麗であるにしても、かつてバッハがありし如く、深く信仰に根ざしたもので、換言すれば、厭離おんり欣求ごんぐの音楽であり、懺悔ざんげ贖罪とくざいの音楽であったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
おそらくこの世をはかなむものは、上御一人かみごいちにんですら意のごとくならない時代のかたさを考えて、聞くまじきおうわさを聞いたように思ったら、一層厭離おんりの心を深くするであろう、と彼には思われた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一歳ひととせ法勝寺御幸の節、郎等一人六条の判官はうぐわんが手のものに搦められしを、厭離おんり牙種げしゆ欣求ごんぐ胞葉はうえふとして、大治二年の十月十一日拙き和歌の御感に預り、忝なくも勅禄には朝日丸の御佩刀おんはかせをたまはり
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)