そこで、しずかに、持ちかえるをさがすと、蔦之助つたのすけの矢は見あたらないで、大鳥居の額縁がくぶちさっている加賀爪伝内かがづめでんないの矢が目にとまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先刻さっき遠矢試合とおやじあいでは河内流かわちりゅう加賀爪伝内かがづめでんない勝点しょうてんをとって、蔦之助は負けということになっていたが、いま、その遠矢の的場まとばであるこの大鳥居のすそに立ってみると
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加賀爪伝内かがづめでんないの遠矢が、がくぶちにりっぱに立っているのに、貴公きこうの矢が鳥居とおいはしらにも立っていないのはどうしたしだいか、これ、弓勢ゆんぜいたらずして、矢走やばしりのとちゅうから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)