剔出てきしゅつ)” の例文
しかし一度俳優の位置に身を置いて自分で動いてみると実にあっけないほど簡単にその原因を剔出てきしゅつすることができるものである。
演技指導論草案 (新字新仮名) / 伊丹万作(著)
更に築地で全部剔出てきしゅつしたわけでもない。私が十二年などという年数について考えることは、ひどく甘い考え方であるといわなければなるまい。
落日の光景 (新字新仮名) / 外村繁(著)
ことに疼痛が甚だしいために、それを除くには眼球を剔出てきしゅつすること、即ち俗な言葉でいえば眼球めだまをくり抜いて取ることが最上の方法とされて居ります。
痴人の復讐 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
肥満せる肉は、口腔内からの脂肪剔出てきしゅつ手術によって、巧みに変形せしめることが出来る。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
悪七兵衛が眼を剔出てきしゅつしゴッホ殿が耳をちょん切った所以ゆえん実にここに存するのである。
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
句の背後からそれを剔出てきしゅつして誇張し見せびらかす作者の主観が濃厚に浮かび上がって見えるのをいかんともし難い、これは風雅の誠のせめ方が足りないで途中で止まっているためである。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「わかります。弾丸の口径が違います。私は剔出てきしゅつしてやったのです」
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ある日、T先生は、子宮繊維腫しきゅうせんいしゅの患者に、子宮剔出てきしゅつ手術を施して講習生に示されることになりました。
手術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「あれはグリオームという病気で、網膜に出来る悪性の腫瘍なのです。子供に多いのですが、大人にもたまにあります、猫の眼のように光る時分に剔出てきしゅつするとよいのでしたが、今はもう手遅れです」
猫と村正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
又、良雄の右眼の傷は意外にも重性の炎症を起し、早く剔出てきしゅつすればよかったものを、手遅れのために交感性眼炎を発し左眼も同様の炎症にかかり、遂に両眼とも失明するのやむなきに至ったのである。
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)