前方まえかた)” の例文
いや、その前方まえかた、燈籠の蔭には、七兵衛でない他の者の姿も、ちらりと影を見せたことがあります。多分、例の隠密おんみつでしょう。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして森林のこの果てはかつて前方まえかたダンチョンと一緒に道に迷って来た事があった。そしてその時私は見た!
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お上から寒かろうと黒縮緬にあおいの御紋付の羽織を拝領いたしますもので、此のお話のずっと前方まえかた一色宮内いっしきくないと申す二千五百石のお旗下が奉行を仰付けられて参って居るうち
その後もそういうようなつまらぬ話は大分に持ち掛けられたですけれど、私だって随分そういう事には前方まえかた苦しんだ事もありますから、まあよい塩梅あんばいに切り抜けることが出来たのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
後へ退くどころか、ぬかるみに足をとられ前方まえかたへのめずったりする。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
前方まえかた蒔こうと用意して置いた種子箱から種子をつかみ出し、肺病と胃癌とでやつれ切った明日にも死にそうな体を運んで、裏の耕地へ出て行くと、例の文句を地面の上へ指で書き記し
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)