切子硝子きりこガラス)” の例文
葡萄の棚より露重げに垂れ下る葡萄を見上みあぐれば小暗おぐらき葉越しの光にそのふさの一粒一粒は切子硝子きりこガラスたまにも似たるを、秋風のややともすればゆらゆらとゆり動すさま
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
同時に又右の松林はひっそりと枝をかわしたまま、丁度細かい切子硝子きりこガラスを透かして見るようになりはじめた。僕は動悸どうきの高まるのを感じ、何度も道ばたに立ち止まろうとした。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夏蜜柑なつみかんの冷やしたのが、丸い金色の切り口を上へ向けて、切子硝子きりこガラス果物盃カップの中にうずまっている。一さじほどの荔枝れいしのジャム。チューブからしぼりだした白い油絵具のような、もったりとした生牛脂クレエムフレェシュ
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)