凡情ぼんじょう)” の例文
「しかし? ……」と冷静になってみる時に、世阿弥は、それもまた、あまりにはかない凡情ぼんじょうにすぎないのではないかと疑った。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、暮夜ぼやひそかに、かれの生命が、過去、現在、また将来へ、その凡情ぼんじょうをさまざまに想いめぐらしたにちがいない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういう、世間なみの人情を、寺では、凡情ぼんじょうとわらう。もっと、ほんとうの愛をもてという。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この書を亡父に捧ぐ」というような白々しいことはいえないが、ぽっちりそんな凡情ぼんじょうが今、わかないでもない。そして私は、いつか亡父の歿年をも過ぎた年ごろになっている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
満身に呼び起される人間当然な凡情ぼんじょうをどうしようもなかった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)